第3章 住人達とご対面

6/9
前へ
/332ページ
次へ
      ◆ …ずっと沈黙しながら、私達は若葉ちゃんが言っていた大きな橋…綾倉橋に着いた。 「…居ないみたいですね」 橋を見渡しても、怪物はいないようだ。 「まさか住宅地の方に出ちゃったとか」 私が怪訝な顔で呟くと、 「いや、無いと思いますよ。住居一帯には結界を張ってますし。怪魔が動ける範囲は決まってますから」 「じゃあ…」 何処に居るんだろう、と言おうとして、私は橋の柵に手をかける。 下に流れている川を見下ろした時…異変に気付いた。 「皆守…くん」 ふいに彼の名前を呼んだ。 「どうしました?」 すぐに彼が歩み寄って来て、 「川に、変な裂け目がある…」 「な」 言った瞬間、下から何かが飛び出して来た。 「ひゃ…!」 腕をぐいっと掴まれて、私は皆守くんの方に引っ張られた。 「ちっ…空間の異常があんな所にあったとは」 拳銃を取り出し、皆守くんがそれを構える。 安全装置らしいものを外し、まず一発。 ダァアンッ!! 「…っ!」 私は同時に耳を塞ぎ、くぐもった轟音。弾丸が唸りを上げる獣みたいなモノに命中した。 「グワァァォッ!!」 ブシャッと腹から黒い液を吹き出したが、銃弾は体を貫通せずに肉に埋まった。 「お硬い体してるんですね」 ダンッ、ダンッ、ダンッ… 連なった轟音に、弾が当たる度怪魔が僅かに振動する。 ちなみに肉に埋まった弾丸がデカい。あんなのが高速で当たったらひとたまりもないだろうな… 「…しかしこんだけ銃連射してて人こないのかな」 「防音結界張ってるんで大丈夫ですよ」 …便利な世の中だな。 「耳塞いどいて下さいね。僕から離れないで」 「ん…」 レンコンみたいに穴の開いた…えーっと、リボルバー?に弾を詰めながら、皆守くんが言った。 カチッ。 音と共に、再び銃を構える。 怪魔は四肢に連射を叩き込まれて動けなくなっていた。何気に的確に命中してますよ。 「ほぁ…」 やっぱスペシャリストだなぁ。 狙いを定め、引き金を引いた。空気を貫いて音を立てる銃弾は怪魔の胸を抉る。 「ヴ…ヴォ…ァ」 口から黒い液を吐き、その獣は断末魔を上げて地に伏した。 「倒しちゃった…」 私は安心感で腰を抜かしてしまい、座り込む。 皆守くんも銃を下ろし、じっと前を見据えている。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

490人が本棚に入れています
本棚に追加