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「…来ますね」
ぽつりとそう呟くと、皆守くんは私の腕を引っ張った。
「わっ」
「立って…僕から離れないで」
抱き起こされ、私は彼の背中にぴったりくっつく。
…怪物、まだいるの?
ギシギシギシ…
「!?」
いきなり橋が軋みを上げて揺れ、私は川から這い上がって来た何かを目の当たりにした。
バキッ、バキ…
橋の柵を掴み、鉄棒で懸垂をするかのように怪物が登ってくる。
「わー、デカいなぁ」
「冗談じゃないよー!!」
柵から橋へと足を伸ばし、体長二メートルはあろうかという怪物が目の前に降り立った。
さっきと同じ様に2本足で立っていて、赤く底光る眼は恐ろしく、まるでキメラみたいだ。
「ぅぅぅう…」
もう私は恐怖で涙目になっていて、出来ればこんなモノなんかに遭遇せずに一生を終えたかったと思った。
「月影さんがいい餌になってくれましたね」
ふざけんなぁぁ!!
私がどんだけ震え上がってるかわかってんのか!!幼稚園の肝試し以来だぞ!?
のうのうと微笑んでいる皆守くんに言いたいことはいっぱいあったけど、とにかく彼にしがみついた。だって怖いんだもん。
「耳塞いで」
「ん…っ!」
ダァン!!
ピシュッ、と微かに巨大な大男みたいな怪魔から血のようなモノが吹く。
怪魔には全然効いてないみたいだ。
「ひ…」
大きな足音を立てながらゆっくり近付いてくる。
「チーフスじゃ効かないか…」
ぼそっと何かを呟く、皆守くんは銀色の拳銃を腰に掛けた黒のポーチにしまう。
「チーフス?」
「ああ、僕の使ってるやつですよ。S&WのM…」
「うわあああ来てるってぇ!!」
呑気に銃の説明してないで真面目に怪魔の相手してよ~!
私はビクビクしながら皆守くんにしがみつく。
「うーん…仕方ないな。…月影さん」
振り返ると、皆守くんは妖艶な笑みを浮かべ、言う。
「貴女を使いましょうか」
はい?
「…契約を執行する」
その言葉と共に、彼が私に手を伸ばす。私の胸元から白い光が放たれ、それが皆守くんの掌に握られた。
これは…
「神、器…?」
握られた光が縦に伸び、先端に曲線を描いた刃が現れる。…間違い無く、鎌の形だ。
「ちゃんと作動してますね。うんうん」
現れた大鎌を振って、楽しそうに笑う。柄の先に付いた鎖が揺れ、チャリンと音を立てた。
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