第3章 住人達とご対面

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「…え?」 皆守くんの声がして、 「…ぁ」 はっと私は目を開ける。彼から平手打ちが飛んでくるとか、そんなんじゃないのに怯えてしまった。 「ごめ…なんか、勝手にびびっちゃって」 私はすぐに謝罪する。変な人だと思われてしまったかもしれない。 「いえ…」 その返事に、私は下に向けていた目線を上げて、皆守くんを見た。 …俯いた彼は、どことなく悲しそうな顔をしていて、さっきとは別人みたいだった。 「帰りましょうか」 「ん…」 歩き出した彼の横に並んで、私も歩く。 …なんか、沈黙が痛い。 (話題ないかな…) 頭の中で精一杯振り絞って考えてみたけれど、今更友好的なキャラを作っても不思議がられそうだ。 ちらっと彼の顔を覗いてみるけれど、やはり考え事をしているのか、目は虚ろ。 「ん?」 よく見ると、ほっぺにさっきの怪物の血みたいなのが付いていた。 「あの…皆守くん」 私はつんつんとパーカーの裾を引っ張り、少しして彼が振り返る。 「ちょっとゴメン」 「わ」 ぐいっと左頬を手で拭うと、それは綺麗に取れた。 「血が…付いてたから。もう取れたよ、大丈夫」 そう言うと皆守くんは、 「…すいません」 一言だけ言うとまた歩き出す。視線は定まっておらず、またしても何かを考えているようだった。 邪魔をするのもアレなので、私も空を見上げてぼーっとしながら宿舎(っていうか豪邸)を目指す。 しかし皆守くんは、何を考えてるんだろう。 意外とつまらない事だったりするんだろうか? そんな事を思っていると、灯りのついた豪邸が見えてきた。 …無事に帰ってこれたよ…!!
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