第4章 一緒に登校、一緒に下校

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「そうですねぇ…根本から説明しますと…神器っていうのは、精神的な外傷を与えられた者が防衛本能みたいに造り上げる、研ぎ澄まされた精神なんです」 「防衛本能?」 「ええ。人は、武器を向けられたら抵抗しますよね。自分を護ろうと腕や手で頭を庇うでしょう」 確かに… うんうん、と頷いていると、皆守くんが続けた。 「自分の心を傷つけようとする出来事から、心を護る為に…戦おうとするんです。純粋に」 にっと微笑んで、私を見る。 …心を守る? 「戦うために精神が強くなって、それが武器として昇華する。大まかに言うと神器は、精神から造られた武器」 何だそれ。 「それが選ばれた人にしか授けられない、物だって言うの?」 皆守くんが話していることがおとぎ話みたいで、私には滑稽に思える。 「…心の傷を負った人間には、三通りあるんですよ」 穏やかな、諭すかのような表情で…皆守くんが言う。 「その痛みに潰れてしまうか、痛みを我慢するか…それとも、痛みに打ち勝とうとするか」 い た み ? 『ー返してぇ!!』 『お母さんとお父さんを、返してよぉ…!!』 私の脳裏に、八年前の記憶が蘇った。 …病棟の中で、必死に繰り返した言葉。 「打ち勝とうとする想いは、強さなんです。神器の本質はその強さ」 「心の強さが…武器ってこと」 「はい。そして神器を授かるには条件が有ります。一つ目の条件は、極限状態で磨かれた強い意志を持つこと。これが中身ですから」 皆守くんはそう言うと、一度目を伏せて間を空けた。 「二つ目は…苗床。神器が宿る場所です。これは…肉体の欠けた部分でないと駄目なんですよ」 「欠けた部分って…」 「ちゃんと機能している箇所は、融合できない。けれど亡くなったり、壊れてしまった所ならば、入り込める」 「ま…さか」 皆守くんが悪戯っぽく笑って、自身の左目に人差し指を当てて見せた。
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