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「八年前の惨殺事件、貴女は左目を負傷しましたよね」
ああ…覚えてる。
お兄さんが、血がべっとり付いた果物ナイフを振り下ろした。
変な雄叫びを上げながら。煌めくそれが左の視界を傷付けて…
「奇跡だとでも思いましたか」
「…思ってたよ、今日まで」
この眼に神器が宿ってるんだ。
「おそらく月詠の力が左の視力を補っているんでしょう」
「つきよみ?」
「貴女が持つ神器の名称です。百年に一度、この世に現れると云う…至高の三種」
すっ、と私を見据える皆守くんの目が鋭くなって、
「僕らチェインは、起きた事件の内容を照らし合わせて、貴女をマークしていただけですよ。貴女が神器を宿している可能性のあるひとりとしてね」
皆守くんが妖艶な微笑を浮かべた。
「ま、良かったですよ。神器は狙われる恐れがありますから。正確な持ち主は、保護に集中できますし」
「つまり神器の持ち主の確認は出来ないんだね」
ちょっと呆れた…ってことは可能性がある人全部を監視してるのかな。なんか大変だな。
私はそんな事を思いながら前を見た。しばらく話していたせいか、もう学園の近くに着いている。
「惨い事故や事件にに巻き込まれた子供はリストにつけてますよ。何人かは神器を持っていたので保護しました」
やがて校門を抜け、私たちは下足に入る。そこでひとつ、
「ふーん…皆守くんは戦闘とかに慣れてるみたいだけど、それは何で?」
かるーく質問。
「え」
返ってきたのは意外な反応だった。あっさり鍛えられたんですとか言うと思ったのに、皆守くんは少し戸惑っているようだ。
「それは…その」
「おっはよう、深澄ちゃん!」
むぎう。
朝から愛のこもった暑苦しい抱擁をかまされた。
いつものように前につんのめりながら、私は答える。
「…おはよ、明日菜」
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