第4章 一緒に登校、一緒に下校

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「え?」 何であの子の話が出てくるんだと私は耳を疑ったけれど、今の皆守くんは冗談を言うような顔でもない。 揺らぎのない冷静さが垣間見えてる。 「とりあえず場所、変えませんか」 …と言われて訪れた公園は、あの時私が初めて怪魔に遭った所だ。 怪魔が突っ込んで壊したはずの花壇は、綺麗に修復されていた。皆守くんいわく、怪物の痕跡を残さない為だそうだ。 「僕らが住んでる世界に…特撮みたいな怪物が存在してるなんて知ったら、みんな困惑するでしょう?」 ブランコに乗りながら、皆守くんが言った。 あれには私も驚いたな。すっごく怖かったし。 「かといって普通の人間や警官には倒せません。特殊な訓練を受けたりしたエキスパートにしか、退治は出来ない」 「へー。で、皆守くんはそのエキスパートなの?」 ブランコを軽くこぎながら、私は問いかけた。朝に答えてもらえなかった質問。 「…いえ、僕はもう人間の域を越えているので」 「なにそれ。天才って事?」 「ーーははっ。…だといいんですけどね」 可笑しそうに笑うと、皆守くんは立ち上がる。 横顔がどこか寂しそうだった。 「それより、陽向さんの話に移りましょうか」 「…うん」 微笑を向けられ、私も立つ。 空を見ると茜色が綺麗に雲を照らしていて、夕方らしい涼やかな風が脚や頬を撫でた。 やがて皆守くんが口を開き、話を始める。 「率直に言いますと、あの人は神器を持っている可能性があります」 「…な」 明日菜が神器を…? 「そんな、だって神器は…」 「陽向さんは八年前、交通事故に遭われたそうですよ」 事 故。 「トラックに退かれて、右脚が酷いことになったらしいです。もう使い物にならない…ってね」 「でも、明日菜に何か大きい精神的なショックを受ける出来事が、あったっていうの?」 いくら純粋な子供といえ、事故だけじゃそこまで追い詰められない筈だ。 「…彼女の家は、両親の仲が悪かったらしいんです。父親がね、凄かったって」 ま さ か。 ーーすっ転んでさぁ。 「虐、待…?」 私は、自然とその言葉を口からこぼしていた。
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