第4章 一緒に登校、一緒に下校

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       ◆ 「ふぁ~…」 学校の帰り道、明日菜は歩きながら欠伸をこぼしていた。 (昨日あんまし寝れなかったもんなぁ…) ごしごしと瞼を擦り、霞んだ視界で前を見る。 (…そうだ、買い物して帰んなきゃ) はっと思い出して、彼女は近くのスーパーへと足を運んだ。 その途中で… 「あ、陽向じゃん」 「え?」 名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは少年だった。 …襟に赤いラインの入ったカッターシャツを赤いネクタイで緩く締め、黒のブレザーを着ている。 自分と同じ学校の男子用の制服だ。 「えっと…」 誰だっけ。 目の前の人物を思いだそうと、必死で頭を回転させる。だが覚えがなく、明日菜はえっと…を繰り返していた。 「あはは、知らないのも無理ねぇか。話したことないしな」 「へ…」 少年は歯を出して笑うと、明日菜に優しく微笑みを向ける。 「俺、穂積多壱(ホヅミタイチ)って言うんだ。お前と同じクラス」 「穂積くん…」 多壱は自分の名を呟く明日菜に歩み寄ると、 「今帰り?」 穏やかな表情で問いかけた。明日菜は頷いて、 「ん…帰りだけど、買い物しなきゃなんないんだ」 「偉いな。手伝いか?」 その質問に明日菜は一度目を見開いて、それから俯く。 「…そんな感じ」 「…」 多壱はそんな明日菜の様子を観察するかのように眺め、 「そっか。頑張れ」 また穏やかな顔でぽんぽんと明日菜の頭に手を乗せた。それから優しく撫でる。 「!」 その行動に明日菜は一度びくっ、と肩を震わせ、多壱を見上げた。 「あ、ごめん…」 多壱がすぐに手を離すと、明日菜はにこっと笑って、 「や、ちょっとびっくりしただけ。だいじょーぶ」 そう言って無邪気に微笑む。多壱は一度目を伏せ、また目の前の少女を見据えると、 「…あんま無茶すんなよ」 「えっ?」 小さく呟いて、明日菜が聞き取れなかったのか不思議そうな顔をした。 「じゃあ、またな」 手を振ると、彼女もうん、と言って振り返す。 その笑顔が痛々しかった。 哀れだと思った。 「…俺には酷だよ」 独りきりの帰り道で、多壱は空を見上げながらぽつりとそんな事を呟く。 彼に与えられた仕事は、陽向明日菜の監視と護衛。そして新しく入ったのがー… 「接触、しましたよ設楽さん」 ファーストコンタクトは完了した。 次へ行こう。
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