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◆
皆守くんがガチャッとドアを開けて、私もその後に続いていく。
「ただいまー」
そう言ってとりあえず靴を脱いで、決められた場所に置いてから私は床に上がった。
皆守くんを待っていると、
「お帰り」
若い男性の声がして、私は振り返る。
「君が深澄ちゃんかな」
話しかけてきたのは綺麗な顔をした二十歳過ぎ位の男の人で、焦げ茶色の髪は肩下ぐらいまで伸びていた。
「設楽さん…」
横を見ると皆守くんがなぜか眉間にシワを寄せている。そして不機嫌そうなオーラを撒き散らしている。
「千郷…」
そんな事お構いなしに男性は満面の笑みを浮かべると、
「会いたかった!!」
ガバッと皆守くんに抱きついた。わお。私硬直。
「うぜぇ…」
ボソッと皆守くんがもらしたけれど、まるで聞こえていないかのように男性ははしゃぐ。
「ああ…すべすべの肌…ふわふわでマロン色の猫っ毛…そして小さな体…なんて可愛らしいんだッッ!!」
引いていいですか?
「会う度抱きつかないで下さいよ鬱陶しい」
生気のない眼差しを斜めに向けながら、男性に揺さぶられる皆守くん。
すると男性は、皆守くんに熱いハグをしたままでこちらを向いた。
「やぁ、君が月影深澄ちゃんだね!噂には聞いているけれど…」
話の途中で、いきなり男性がビュンッとこちらへすっ飛んできた。
「濡れ烏の羽のように艶やかで真っ直ぐな黒髪!!子鹿のような丸く潤んだ瞳!!儚さを感じさせる白雪のような肌!!」
そして両手を掴むと、キラキラした眼差しで私を見据える。
「まるでかぐや姫の生まれ変わりだね!!ああ、君に結婚を申し込みたいよ!!」
「消えてください」
チャッ。
男性の頭に銃口が当てられた。
「すまないね千郷…嫉妬してしまったかな?あれ、なんで君は拳銃なんて持って居るんだい?」
「あなたを始末する為ですよ」
冷酷な顔で皆守くんが言い放った。機嫌が悪いようでかなり怖い。黒いオーラが放出されてる。
「すみません月影さん。この気持ち悪い人は設楽本広(シタラモトヒロ)と言う気持ち悪い僕らの上司です」
「ヒドいな~。気持ち悪いを連発したね?でもそんな千郷のSなとこも…」
パァン。
煙を上げて銃が火を吹いた。そして設楽さんの足下の木製の床に小さな穴が開いた。
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