490人が本棚に入れています
本棚に追加
「う~…」
気持ちの良い朝。廊下でうんと背伸びをして、私は食堂に向かう。
私の名前は青柳若葉。
坂ノ枝(サカノエ)中学校に通う13歳…中学二年生だ。
四年前、私はここ…怪魔討伐及び神器保護組織、“裁きの鎖”《チェイン》に勤めていた両親を、怪魔の襲撃により亡くした。
身内はいたが居心地が悪く、その時ここの総帥に剣術の才を認められて、
神器と契約し操者として怪魔と戦う事で、ここに住むことを許された。
「あ、おはよ若葉ちゃん」
「お早うございます深澄さん」
深澄さんはつい最近保護された、神器…月詠を持つ女性だ。
落ち着きのある人で、ここの宿舎にまだ女の人は少ないので仲良くしてもらっている。
「わっかばちゃん」
「ふわ!?」
食堂に入ろうとした時、いきなり誰かが抱き付いてきた。
「おはよー」
振り返ると、銀色がかった白い髪に赤い瞳の人。
神器、疾風(ハヤテ)を持つ私のパートナーであり、お兄ちゃんのような存在。
「百重さん」
名前を呼ぶと、彼はにこーっと笑った。向かい合う形になって、改めてあいさつした。
「お早うございます」
「ん。若葉ちゃん」
舌足らずな、言葉がちょっと足りない喋り方で、いつもにこにこしている。
「あ、そだ」
気付いたようにはっとなると、百重さんは私を引き寄せて、
「おはようのちゅー」
「う…」
まただ。
何故か百重さんは起きると必ず私にキスを求めてくる。
ほっぺかおでこだからまだ良いんだけど、さすがにこんな年になると恥ずかしい。
「…はい」
私が背伸びして百重さんの右頬に軽くキスをすると、百重さんは嬉しそうに微笑んだ。
…この笑顔に弱い。
「朝からいいなぁ」
くすっと笑いながら降りてきたのは多壱さんで、
「おはよ多壱」
「おはよ。若葉ちゃんも」
「お、お早うございます…」
恥ずかしくて俯きながら返事をした。
私と百重さんは恋人ではなく、ただの兄妹のような感じなので、特にみんな気にしていないみたいなんだけれど。
「おれたちもご飯食べよ」
百重さんが手を引いて、歩き出したので、私もついて行く。
これからは人の居ないところですることを心掛けよう…
最初のコメントを投稿しよう!