第5章 健気さと儚さ

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「う~…」 気持ちの良い朝。廊下でうんと背伸びをして、私は食堂に向かう。 私の名前は青柳若葉。 坂ノ枝(サカノエ)中学校に通う13歳…中学二年生だ。 四年前、私はここ…怪魔討伐及び神器保護組織、“裁きの鎖”《チェイン》に勤めていた両親を、怪魔の襲撃により亡くした。 身内はいたが居心地が悪く、その時ここの総帥に剣術の才を認められて、 神器と契約し操者として怪魔と戦う事で、ここに住むことを許された。 「あ、おはよ若葉ちゃん」 「お早うございます深澄さん」 深澄さんはつい最近保護された、神器…月詠を持つ女性だ。 落ち着きのある人で、ここの宿舎にまだ女の人は少ないので仲良くしてもらっている。 「わっかばちゃん」 「ふわ!?」 食堂に入ろうとした時、いきなり誰かが抱き付いてきた。 「おはよー」 振り返ると、銀色がかった白い髪に赤い瞳の人。 神器、疾風(ハヤテ)を持つ私のパートナーであり、お兄ちゃんのような存在。 「百重さん」 名前を呼ぶと、彼はにこーっと笑った。向かい合う形になって、改めてあいさつした。 「お早うございます」 「ん。若葉ちゃん」 舌足らずな、言葉がちょっと足りない喋り方で、いつもにこにこしている。 「あ、そだ」 気付いたようにはっとなると、百重さんは私を引き寄せて、 「おはようのちゅー」 「う…」 まただ。 何故か百重さんは起きると必ず私にキスを求めてくる。 ほっぺかおでこだからまだ良いんだけど、さすがにこんな年になると恥ずかしい。 「…はい」 私が背伸びして百重さんの右頬に軽くキスをすると、百重さんは嬉しそうに微笑んだ。 …この笑顔に弱い。 「朝からいいなぁ」 くすっと笑いながら降りてきたのは多壱さんで、 「おはよ多壱」 「おはよ。若葉ちゃんも」 「お、お早うございます…」 恥ずかしくて俯きながら返事をした。 私と百重さんは恋人ではなく、ただの兄妹のような感じなので、特にみんな気にしていないみたいなんだけれど。 「おれたちもご飯食べよ」 百重さんが手を引いて、歩き出したので、私もついて行く。 これからは人の居ないところですることを心掛けよう…
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