序章 月影深澄

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       ◆ 「わー…」 私はでっかい建物を前に感嘆の声をもらしていた。 私立峰葉(ホウヨウ)学園。 受験や体験入学の時も来たけれど、いつ見ても大きな学校だ。 名門校としても有名なんだけど、…まさかそんな学校に受かってしまうとは。 「新入生の方、こちらでーす」 上級生の先輩たちが体育館へと誘導している。 「…私もいこっと」 人の流れに混じって、駆け出したその時。 どんっ。 「んわっ」 背中から衝撃を受けて、私は前につんのめる。 …何か朝にもあったよ? 「何よもー…」 またか。 ちょっと苛立ちを込めた眼差しでぶつかってきた人を見ると、 「あたた…あ、すびません」 鼻を押さえて謝る少女がいた。 …私と同じ新入生か。 「すみませ…ちょっとぼーっとしてて。あはは…」 笑いながら鼻を押さえる少女。 一応謝罪はしてくれたので、 「…今度から気をつけなよ」 それだけ言って私は歩き出した。 「あ…」 …ったく。 体育館体育館っと… 「待って!」 がしっ。 「え」 誰かに思いきり手を掴まれ、私は振り返る。 …さっきぶつかってきた女の子だった。 「ね、あなた…わたしと友達になってくれませんか!」 はい? 私は心底きょとんとした顔で女の子を見ると、 「わたし陽向明日菜(ヒナタアスナ)!その、知り合いとかいなくて。良かったら友達になって!」 ぐっ、と手を掴まれ、さらにキラキラと輝いた目で見つめられる。 …なんなんだこの子。 「はぁ…別にいいけど…」 面倒なのでそう返すと、 「やったー!!じゃあ親友第一号ね!」 …親友決定ですか? 「わたし、友達づきあいとかは狭く深くがモットーなの。よろしく…えーと誰さん?」 陽向さんが小首を傾げる。 「月影深澄…よろしく」 そう言うと、 「わーい!!よろしく深澄ちゃーんっ!」 握手の形でブンブン手を振り出した。恥ずかしいのでやめて欲しい。
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