Ⅰ‐予知‐

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 僕の休日は、散歩から始まる。 「今日は、散歩日和だなぁ」  僕はそう言って、スニーカーの紐を締め直した。  “散歩”……それは、小学生からの唯一の娯楽のようなものだった。学校でも少し浮いた存在の僕は友達が少なく、遊びと呼べる遊びは、ほとんどしたことがない。  もちろん、一人でも遊べないわけじゃない。ゲーム、読書に音楽を聴いたりと、遊び方はいくらでもあった。  でも、僕がこの“散歩”にこだわるのには、単純かつ明確な理由がある。  友達のいない僕は皆に聞いたわけじゃないから、そうだとは言い切れないが、だいたいの人は同じ理由で“遊び”に没頭する。  その理由。  それは……、楽しいから。
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