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ゴミ捨て場に赤いものが倒れていた。
艶やかな赤い髪。細かな傷が絶えないしなやかな四肢。せっかくの真赤ドレスもボロボロ、無残な姿となっていた。
女だった。
真っ赤な女。
けど何よりリカルドにとって印象的だった赤は、今も強く射抜いてくる瞳で。
薄暗い世界に染まらず、炎よりも熱く明確な赤を爛々と示している。
全く媚びない、気高い瞳。
だけど彼女は言ってくる。
「おい。私を助けたらどうだ?」
今日は雨だった。曇天から降り注ぐ灰色の雨は彼女の無残な姿をさらに引き立てている。
(俺の猫だってもう少し可愛らしく鳴くぞ……)
雨の日にゴミ捨て場に捨てられた仏頂面の猫――それを彷彿させられ、リカルドは苦笑する。
(本当は黒猫を探しに来たんだけどな)
気が付けば、彼はその赤い猫に手を差し伸べていた。
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