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電車がこんなに面倒なものとは思わなかった。
あたしは思わずため息をつく。
「ゴルァ、そこの女!」
まったく。なんかすっごい馬鹿らしい。
空いてる最終の電車の中で美人のOLに絡んでいたサラリーマンっぽい中年男が、今度はあたしを指さした。
「てめぇため息ついただろう」
すごい。地獄耳だ。
そしておぼつかない足取りでこっちに向かってくる。
顔が赤い。間違いない。これは完璧な酔っ払いだ。
「てめぇ、……おっと、よくみりゃあ可愛いじゃないの」
うぇっへっへと笑いながらあたしの顔に視線を這わす。
いい加減、うざったい。
ぶちのめそうか。
思い、立ち上がったそのとき――
「――やめろ!」
一筋の声が通った。
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