大巫女と開幕の祖

3/11
前へ
/230ページ
次へ
 突如、目の前に白鳥が舞い降りた。  ほの白く光を放ち、黒い瞳は鋭い。 「ついて参れ」  白鳥――が口を開くと同時に羽広げ飛び上がる。  男性にとって、最初の試練は石段だった。 「……ま、待て」  白鳥は制止の声が掛かる度、降り立つ。  律義ではあるが、眼差しは冷ややか。 「老体には厳しいか」  遠慮の無い言葉。 「うむ……労れ」 「断る」  両者共に曲者といったところか。  境内に足踏み入れると、森閑とした空気が身体を冷やすようで心地良い。 「気持ち良い所だな」 「水を」 「ん?おお済まぬ」 「こちらだ」  霊使に付いてゆくと、水呑み場に出た。  冷たい霊水を口にし、一息。 「案内ご苦労だったな。ワシは巫女に会いに来たのだが、取り次いでもらえまいか」 「この杜には巫女以外おらぬ」 「――ほう?では、そなたは何者だ」 「我は我」 「禅問答か」  苦笑いするが、霊使は表情を出さずに見詰めてくる。 「案内しよう」 「巫女の元へな」  返事の代わりに霊使は羽を広げた。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加