大巫女と開幕の祖

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「何故だ」  知らず、語気荒くなる。 「今この時も、兵や民が鬼に食われ」 「何故鬼がはびこる」  又遮られる。  視線を合わせると、冷ややかな鋭い眼差しと正面からぶつかる。 「乱世が全てよ」  巫女は嘲笑うように言い放つ。 「うぬら兵を持つ者は、何をした?」  大地を朱に染め、天は嘆きに焦がれ。  人心の乱れが闇の増大を招いた。 「乱世を治めようとせずに鬼を封じよなどと、おこがましい」  その言葉は男性に鋭く突き刺さった。 「治めてみせよう」  いつしか膝に置いた手は堅く握り締めていた。  既に各地の大名に根回しは済ませていた。  後は動くだけ。 「……最後となるか?」  巫女の問い掛けは、これ以上の戦乱を起こさずにいられるか、という意味を含んでいた。 「相手の出方次第だがな。完全に潰すには少し時間が要る」 「だが、泰平の世を望むか」 「ワシは無血が一番望ましい」  凛と言い放つ。  その顔には苦渋の選択を強要されて、乗り越えてきた者特有の強さがあった。
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