大巫女と開幕の祖

9/11
前へ
/230ページ
次へ
 日が傾きかける頃、男性は杜を出る事にした。 「見送りは要らぬ」 「するつもりも無い」  遠慮の無い巫女の言葉に、男性は笑顔を浮かべた。 「面白いな、そなたは」 「楽しませるつもりも無い」  巫女の答に、男性は声を上げて笑った。  心底楽しそうに。 「……早く帰るが良い。間もなく日が暮れる」  言外に鬼の襲来の意味を含ませ、巫女は帰参を促した。 (ふむ……確かに傲岸不遜だな)  男性は胸中で呟く。  だが、巫女の分かりにくい気遣いも見抜いた。 「巫女よ」 「何じゃ」 「そなた、この杜で一人では寂しくないか?」 「ない。慣れておる」  一蹴されたが、男性は続けた。 「連れ合いを作る気は」 「無い」 「だがのう、巫女よ」 「年のいった者は、皆同じ事しか言わぬ」  言葉の途中で一蹴する。 「不要」
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加