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Part1 過去と現在
思い起こせば、
あの頃からだ。
今の俺が出来たのは。
目を閉じれば、
甦るあの頃の記憶が。
-11年前-
今の俺が17歳だから、
6歳の頃の俺だ。
あの日、起きた出来事は。
いつものように
学校から家に帰った。
すると、
いつも聞こえてくる
あの音がしない。
そのいつもの音がする
場所へ行くと
いつもいる人はいなかった。
不思議に思い、
リビングに足を運ぶ。
でも、誰もいなかった。
買い物かな……?
幼い俺には
そんな発想しか
出てこなかった。
でも、いくら待っても
帰ってこなかった。
そのまま、
待ち続けていると
誰かが帰ってきた。
玄関へ急いで走った。
でも、そこにいたのは
待っていたのとは
別の人物だった。
「あっ、お父さん……。
おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
それだけ言って
親父は部屋に入った。
それから、
親父が風呂から
上がるのを待っていた。
そして、30分ほど経ってから
親父は上ってきた。
ずっと、聞きたいことを
聞いてみた。
「ねぇ、お父さん。
お母さんは、何処?」
「……」
でも、親父は黙っていた。
「ねぇ、お父さん。
お母さんは?」
「いない」
親父はそれだけ言って
テレビのリモコンを
手にした。
いない……?
幼かった俺には
何でおふくろがいないのか
検討もつかなかった。
だから、子どもながらに
聞いたらマズいと
思いつつ聞いてみた。
「何で?」
「出ていったからだ」
でも、親父の方は
迷いもせずに
あっさりそれを口にした。
……出ていった?
出ていったことが
分かっても
何処に出ていったのか
何故、行ったきり
帰ってこないのか
俺は分からなかった。
「何処に?」
「自分の家にだ」
……自分の家?
お母さんのお家は
ここだよ?
親父の言っている意味が
俺には理解
出来ないことだらけだった。
「何で?母さんのお家はここだよ。
だから、帰ってくるよ?
そうだよね?
ねっ、お父さん!」
何度も言った。
親父が黙っていても。
きっと、心の中では
帰ってこないことは
分かっていたかもしれない。
それでも、認めたら
ホントに帰ってこない
気がしたから……。
でも、その行動は
親父の怒りに
触れてしまった。
「いい加減にしろ!
帰ってこないものは
帰ってこないんだ!
何度言えば、分かるんだ!」
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