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海面から頭を突き出し、意識が回復するまで、時間はそんなにかからなかった。
激しく咽びながら、袁晋卿は尋問するように、
「どうして、僕を、助けた。死ぬかもしれなかったのに」
隣にいる男に訊いた。
二人は背を向け合っていた。
「なんとか言えよ。普照」
「さぁな」無愛想な声が聞こえた。「おれにも良くわからん」
袁晋卿は黙った。何と言い返せばいいのかわからなかった。
巫山戯るなっ、と言うべきなのか、それとも、感謝するべきなのか悩んだ。
「おれは、もう人の死ぬところは見たくないだけだ」
その言葉がはっきりと耳に入ると、普照は袁晋卿の前に移動した。
そして、右手を差し出した。
「おれの数珠だ。さっきのような奴が現れても大丈夫なように持ってろ」
ひょいっと受け取って、
「自分の分はあるのか」
「ない」
「ないって、じゃあ、今度、現れたらどうするんだよ」
「おれは、おまえのような間抜けじゃない」
「なんだとおっ」袁晋卿が憤って声を上げた。
「よぅ、大丈夫だったか」
振り返ると、声の主は真備だった。
袁晋卿は、自分のすぐ近くに若藻もいることに気づいて、名を呼んだ。すると、迷子になっていた童が、母を見つけた時のように、若藻が近づいてきた。
集まったのは、この者たちだけだった。周りを見て、袁晋卿は何か変だと思った。
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