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「見ろ」真備の歓喜の声が上がった。「かがり火だ」
指さす先には、希望の光が、点となって見えた。
距離は、だいぶあるように思っていたが、波の力で引き寄せられ、短い時間で近づくことができた。
「無人、か」浜に足を着けて、若藻が呟いた。
島は思ったより小さく、多くの人が住んでいるとは考えにくかった。
「かがり火が見えたんだ。人がいるに決まっているだろう」
真備が人を捜すように歩き始めた。他の者の後に続く。
ほとんどが木で覆われている小径を見つけ、真備は、用心することなく進んでいった。だが、袁晋卿はためらった。この奥へ入って大丈夫なのだろうかと。
ふと、横を向いた袁晋卿は、舟が一隻、浜の上で留まっているのに気づいた。
「良かった。やっぱり人がいるみたいだ」
と少しだけ安心して、歩き始めた。
だが、道を進むにつれて、色んな不安が横切った。
ざあざあ、と木の葉が擦れ合い、不気味に笑っている。樫の枝々が、まるで骸骨の集団のように見えた。
「あ……」
霧と雲が流れて、月が顔を出した。水をかけたように、周囲の闇が流れた。
目の前に、門構えの大きな屋敷が潜むように建っていた。
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