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月が照らすその光りを頼りに良く見ると、まるで廃屋であった。
何か、物の怪などの類が好きこのみそうな場所であると、誰もが、不吉な予感を抱いた。
だが、体力は限界に近く、吸い込まれるように歩み寄る。
「……っ」袁晋卿が声にならない悲鳴を上げた。「ひ、人魂」
「違う。あれは灯籠だ」
若藻の言った通り、門を挟むように灯籠が二つ備えられていた。
その中で、火が踊っていた。袁晋卿は、人がいるということを、思い出した。
真備の手が、扉に触れたのか触れていないのか、微妙なところで、外側に勢いよく開いた。そして、何かが飛び出した。
銀色の光りが、袁晋卿を襲う。寸前で避け、尻餅を付いた。
妖しい輝きを放っているのは、刀の刃だった。何者かが、刀で襲ってきたのだ。
危険を察知した真備が節刀を抜いた。
炎の灯りが、逆光となっていて、顔は確認しずらい。
だが、男であるのは一目瞭然だった。恰幅の良い肉体を持っている。
目をこらして、袁晋卿たちは男の顔を睨んだ。
顎髭は雑に伸びている。髪型はまるで山賊のように短く、上へ尖っていた。
太い眉の下にある瞳は、真備と同じような野心の炎が燃えていた。
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