島 1―2

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 しばらく歩いて、道の先に扉が見えた。 「やっと屋敷の人間に会えるかもな」 嬉しそうに古麻呂が、扉を開ける。  瞳に映ったのは、何もない部屋だった。火の点いた燭台が四つ隅に備えられている。開けた扉の反対側に、別の扉が二つ並んでいる。それだけだった。 「何にもねぇな」 ひどくつまらなそうに古麻呂が言って、足を踏み入れた。他の者も後に続く。 「それよりも、どちらの扉を進むべきか、だな」  冷静に若藻が言葉を出すと、宙から、あの紙切れが、若藻の手元へ落ちた。 「おいおい、その紙は、まさか」  古麻呂は覗き込もうと若藻に身を預けようとした。そんな古麻呂を、避けるように身を離した若藻は、静かな声で、 「右の道を進み、奥の部屋で体の汚れを洗い流してください」  言葉の終わりと同時に、右の扉が、ゆっくりと生きているように開いた。軋みの音をたてることなく、静かに。  一同は、開かれた扉の奥を覗いた。今までと同じ廊下が一本だけ延びている。 「左側の方は、どうなっているのかな」疑問に思った真備が、左側の扉へ歩み寄った。  しかし、開けようとはせず、真備はただ立っているだけだった。 「おい、どうしたんだ」 「紙がはさまっていた。ええと……ここから先を通るには、まず、体の汚れを落としてからにしてください、と書いてある」 「どうやら、かなり綺麗好きみたいだな、ここの主は」
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