島 1―3

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 その様子を見た若藻は、「では、良いというまで、目を閉じておるのだ」と体を向けて、頼むように言った。 「へっ」 そのようなことでいいのか、と呆気にとられた袁晋卿だったが、深く考えず目を閉じた。 「目を開ければ、この世で、生を受けたことを後悔するほど、不幸な目に遭うぞ」 目を閉じた袁晋卿に力強く言った。 「開ければ、末代まで呪ってやるぞ」 「う、うん」と、口で言った袁晋卿だったが、これほどまでに言われると、気になってしまう。 ほんの、ほんの少しだけ、瞼を開けた。 「もし、覗くようなことをすれば、袁と私の仲は、終わりだな」  その言葉に、袁晋卿は思わず、瞼を下へ戻した。 「見てないよ。……灯りを頼むよ」  沈黙。そして、若藻の息を吐く音が聞こえた。  何かが始まったのだ、と袁晋卿は察した。もう目を開けようという考えはなかったものの、若藻が、いったい何をどうしているのか、その疑問が気が気でなく、体がうずうずしていた。  見てみたいが、目を開けるわけにはいかない。若藻との仲を崩すのが嫌であった。心の中にかなり葛藤があった。 「終わったぞ」  若藻の言葉を聞いて、袁晋卿はいつの間にか、ぎゅっと力強く瞼を閉じていることに気づいた。長く続いた葛藤がやっと終わって、瞼を開けると、まぶしさに目を痛めた。  ゆっくりと灯りに目が慣れてくると、大して驚くほどの灯りでないことがわかった。だが、暗闇に対する心配は去った。  二人は並んで、頼りない火が照らす廊下を歩いた。袁晋卿は、先を知らない道に頭を悩ませていたが、若藻は、やはり気にしていないようだった。 「若藻は、良くこんな、先のわからない道を、平気で通れるね」 「普照を捜すには、どんな道だろうと通るしかなかろう」 「……うん、そうだね」 納得したのか、してないのか、袁晋卿はとりあえず頷いて、この奇妙な道について訊かないようにした。
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