島 1―3

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 息を呑んで、思わず後ろを振り返った。もちろん誰もいない。目を細くして、注意深く見てみるが、やはり何も変わったところはなかった。 「若藻、今、女の笑い声が…………あれ、若藻」  隣にいるはずの若藻が消えていた。音もなく、まるで雪が溶けたように。 焦って上下左右に首を回したが、その姿は見えない。  また、あの漁師たちと同じ道を歩んでいる。これは偶然なのか、必然なのか。  それとも、あの笑い声が何か関係しているのか、考えれば考えるほど、頭の中は混乱する。
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