島 1―4

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「助けてぇ」  袁晋卿は、まっすぐに続く道と、左に曲がった道を確認すると、迷わず左側の道を選んだ。助けて。強く願った。 「誰か、助けてっ」  瞳に映った扉を、突き倒すように飛び込んだ。その部屋は、真備たちと別れた場所だった。人気はすでにない。袁晋卿は慌てて扉を閉じた。  これで助かったものだと、袁晋卿は安心して、扉を背に腰を下ろした。呼吸するたびに肩が上下に動く。 胸が大きく膨らむ。頭をかかえ、若藻と普照の名を呟いた。普照を捜そうとした自分は逃げ出してしまった。 すぐそばにいたのに気づくことなく、若藻は姿を消した。  悔しさと、自分に対する苛立ちが、腹の底からわき上がってくるのを感じていた。  じ、じじ……。  袁晋卿は、ふと、すぐそばから聞こえる奇妙な音を耳にした。そして目を向けた。  燭台に灯されている火が、まるで自らの意志で萎むように消えようとしている。  しゅうぅ、と音だけを残して、四本ある内の一本が消え、周辺が暗くなる。次は、別の燭台に灯っている火が消え始めた。  飛び上がった袁晋卿は、反対側にある二つ並んだ扉へ向かった。闇はまだ、自分を喰らおうとしている。  真備たちが通ったと思われる右の扉を選んだ。  でも開かない。……変だ。自分と若藻以外の者たちは、この先を通ったのではないのか、袁晋卿はうろたえた。  だが、そんな暇はない。右が開かないなら、すぐに左側の扉に手をかけた。  開いた。袁晋卿は、通ったことのない道を気が狂ったように駆けた。
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