島 1―5

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 それから二人は、遣唐使船での時のように、肩を並べて座り話をしていた。 やっと若藻に会えた喜びを感じている袁晋卿は笑顔が浮かんでいた。 「あの時、気づいたら若藻が消えていて、驚いたよ」 「私も、同じだ。気がつくと、袁が消えていた」 「でも、不思議なこともあるんだね」 「違うぞ」 若藻が、袁晋卿の顔を見つめて言った。 「聞いただろ、女の笑い声を」  袁晋卿から笑顔が薄らいでいく。 「全て、あの女の仕業であろう。我々は、何者かの手のひらにおるのだ。私たちが、あの道で互いを見失ったのも不思議ではない。それに――」  若藻が一度言葉を止めた。そして、 「不思議なことなど、この世には、何もないのだからな。どんな出来事にも、必ず何かに繋がっている」 「あっ、その言葉」  袁晋卿が小さい声を漏らした時だった。木が軋む音が、袁晋卿の耳に入った。辺りには誰もいない。  ぎぃ、ぎぃ、まるで死者がゆっくりと歩み寄っている感じの音だ。 「う……うぅ……」  背中の辺りで、すぅっと悪寒のような、奇妙な感覚があった。すぐ後ろからだと気づいた袁晋卿は、若藻の手を取って、縁から離れた。  何かが、上ってきている。  袁晋卿は、何か飛び出さないかと心配しながら見つめた。  ゆっくりと、手が生えてくるように姿を見せた。 「きゃあああっ」 袁晋卿は叫び声をあげて、逃げようとした。しかし、若藻が腕を強く掴む。 「騒ぐな。良く見ろ」  逃げようとしながらも袁晋卿は、恐る恐る視線を戻した。  それは、徐々に、姿を現していった。
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