島 1―5

3/9
前へ
/111ページ
次へ
 頭髪のない頭。 痩せこけた頬。そして、僧だと一目でわかる服装。 青年ともいえる男だった。 袁晋卿は、恐れていることを忘れて、男を凝視した。 「もしかして」  男は上り終えると、力尽きたように転がり落ちた。 「普照ぉ」 袁晋卿は駆け寄ると、慎重に体を起こして、顔を覗いた。  ぐったりと目を閉じていて、顔色も悪かったが、そこにいたのは間違いなく普照だった。  もう一度、名を呼ぶと、まるで反応するように薄く目を開けた。が、それも一瞬だけで、すぐに意識を失った。 「あ、ああぁっ。若藻、どうしよう」 普照は死んでしまうのではないか、そう思って袁晋卿は慌てた。  若藻は、静かに普照の前に歩み寄って、体のあちこちを触りだした。  袁晋卿は、心配そうに見つめているだけだった。 「安心しろ。気を失っているだけだ。だが、早くどこかで休ませた方がいいだろう」  袁晋卿が、うんうんと何度も頷いて、普照を背負った。 「なるほど。梯子が取り付けられていたか。それを使って上ったわけだな」 普照が這い上がってきた所を覗いて、冷静に若藻が呟いた。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加