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「これで全員がそろったね」
袁晋卿は嬉しそうな顔をして言った。しかし、若藻は、何やら難しい顔で考えごとでもしているようだった。
「大丈夫だよ。普照なら、きっとすぐに目を覚ますよ」
「そうだな。では私は、真備たちにでも、顔を出してくるとしよう。彼らはどこにおるのかね」
「食間にいるよ。あそこの扉がそうさ」
袁晋卿が指さして、
「あ、僕も一緒に行くよ。普照がいたことを伝えないと」
「いや、それは止めておいた方がいい」
若藻の意外な言葉に、袁晋卿は、「どうして」と驚いた。
「あの二人のことだ。すぐに様子を見にくるであろう。今は知らせず、普照の体力が回復するのを待って、知らせるべきだ」
袁晋卿は、納得して食間に向かう若藻を見送った。
そういえば、若藻はどうやって、あの高殿へ来たのだろう。この食間を通ったわけではなさそうだ。
袁晋卿は気になっていた、木の戸に手をかけた。もしかすると、この部屋の中に、もう一つ道があるのかもしれない。若藻はそこからこの廊下へ出て、高殿へ行けた。と、袁晋卿は推測した。
戸に鍵はかかっておらず、まるで氷の上をすべるように、すうぅっと開いた。
中からはひどい臭いがした。かび臭いような、何かが腐ったような、吐き気が催す悪臭だ。
袁晋卿は静かに戸を閉じて、中を見渡した。
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