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大小とそろっている、ぼろぼろの木偶が数体、壁を隠すほどに置かれている棚、その中には、生き物を液体に浸した瓶や、液体だけの瓶があった。
「物置部屋かな」
袁晋卿は、瓶に入った、見たこともない生物を眺めながら、室内を歩いた。
そして他の棚に目を向ける。
「うわぁ、貴重な紙で、こんなに書物を作っている」
いったいどのようなことが書かれているのだろう、と気になり、適当に数冊取って開いた。
古いもので字は見にくく、解読に、かなりの時間を費やした。
「なるほど。どうやら、この屋敷の主は気孔や魂について調べていたみたいだね」
元の位置に戻すと、棚の横にある、文机に気づいた。上には山積みされた紙と筆、そして、文字が書かれてある細い木の板と、刀子。
「木の板に書いた文字を削るための小刀か」
袁晋卿は、刀子に目が止まって、鞘を抜いた。
錆はなく、刃は今も尚、生きている。
「何が起こるかわからないからな。持っておこう」
そう呟いて、懐にしまうと、後ろから氷を付けられたような寒気を感じた。
指先から腕や背中にかけて、何か細かい虫が這っているようだ。
そして視線。
袁晋卿は動けないまま、じっと立っていた。
緊張した空気の中、沈黙が続く。逃げようにも逃げられない。膝が勝手に震えた。
ゆっくりと、時間が、溶けた蝋のように、流れた。
「なぜ、……に入った」
ぼそぼそとした男の声。
びくりと、肩が震えた。やはり誰かいたのだ。
「だ、れ」
袁晋卿は振り向かず、そのまま訊ねた。
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