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一段と冷え込んだ朝。
猫はいつものように、トシヤの病室の窓を引っ掻いていた。
おかしい…。
いつもならすぐに窓に駆け寄ってくるトシヤが、ベッドに横になったままだ。
眠っているのか、具合が悪いのか。
…もしかするとそのまま起き上がらないのでは。
怖くて、怖くて…猫は引っ掻き続けた。
ガリガリ、ガリガリ。
爪がどうなろうと、知ったことではなかった。
しばらくして、トシヤはベッドから腰を上げ窓に近づいてきた。
ホッとしたのも束の間。
開いた窓から温かい風と同時に、冷たいトシヤの声が流れてきた。
「毎日毎日、何なんだよ…いい加減、放っといてくれ!!」
猫の表情は強ばった。
よろよろと、トシヤはその場を後にする。
音を立てて乱暴に閉められた窓は跳ね返り、隙間を残した。
猫は滑り込んで、トシヤを追いかける。
もう人の目なんてどうでもよくなっていた。
たった一人の友達に拒絶されたことが信じられなくて…。
猫はただひたすらに走る。
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