天と地の狭間

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清々しいほどに晴れ渡った空。 暖かい日差しが降り注いではいるものの、体に染み込むように冷えた空気は、冬の到来が間もないことを告げていた。 市立病院の屋上。 雨ざらしで少し古びた木のベンチ。 今、空と彼らを遮るものは何もない。 からっと乾いた冷たい風が、隣に座った少年の柔らかい前髪を掻き上げた。 少年は空へと手を伸ばす。 「飛びたいなぁ…」 何かを掴む様にぐっと握られた拳は、微動だにしなかった。 その肌は果てしなく白く、溶けてなくなってしまうかの様に閑雅で。 白い吐息と共に立ち上って消えてしまいそうだった。 隣に座った猫は目を細めて、寂しそうに少年を見つめる。 天と地の狭間。 眼下に広がる町並みを眺める少年の横顔は、残されたわずかな命を物語っていた。
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