狂い始めた未来

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カリカリ…。 カリカリ、カリカリ…。 どんよりとした重たい空の日。 トシヤは奇妙な物音に気付き、窓辺に近寄った。 見ると一匹の黒猫が「中に入れてくれ」とでも言うように、執拗に窓を引っ掻いている。 黒雲よりもずっと暗い色。 金色に輝く鋭い眼光。 夜空の星の様で、綺麗だと思った。 いけないことだとは分かっていた。 見つかったら絶対に怒られる。 それでも躊躇いながら窓を開けたのは…何もかもが嫌になっていたから。 隙間を縫うようにすり抜け、猫は改めてトシヤに向き直る。 身構えるその頭を撫でると、目を細めて鳴いた。 トシヤは狭苦しいこの場所で友達を見つけた。 猫は生まれて初めて友達ができた。 一人と一匹はすぐに仲良くなった。
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