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「そうそう、焦る必要は無いズラよ。対バンの相手も俺達より格下だし、余裕――ぶはぁっ」
俺の必殺猫パンチを食らったレンは、盛大な唾を撒き散らし、華麗に宙を舞った。
大の字になって仰向けで倒れるレンを、悲しい瞳で見つめる。
シャロンもひげ丸も、唖然とした表情で固まっていた。
俺が手を出すと言う事は、本気で怒っているから。二人は、それを知っているんだろう。
「見損なったぜ、レン。俺は、本気で音楽と向き合ってくれるメンバーだけを集めたつもりだった。お前は……そんな俺をあっさりと裏切ったんだ!」
静寂を切り裂いた俺の怒鳴り声が、倉庫を揺らす程に響く。
親友のレンを無理矢理メンバーに入れたのは、俺だ。だから、けじめも俺がつける。
「やる気が無いなら、メンバーから外れてくれ。本気になれない奴が居ると、練習の邪魔だ」
「くりん、そんな言い方は無いんじゃない? レンだって一生懸命やってるんだからさ」
横から、シャロンが弱々しい声でレンをフォローする。
「いや、くりんの言うとおりズラ。やる気が無いってのは心外だけど、邪魔になってるのは間違いないズラよ」
立ち上がったレンは、口許を前足で拭いながら、倉庫の入口へすたすたと歩いていった。
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