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窓から射し込む夕日を浴びたその猫背は悲しげで、心が痛む。
「ちょっと、これで良いのくりんっ? レンを止めてよ!」
シャロンの悲痛な叫び声を尻目に、レンは入口へ歩き続ける。
そして、入口の扉を開けた所で立ち止まり、振り返った。
「頑張ってインニャーズデビューしろズラよ。じゃあな……」
微かに聞き取れる声でそう言ったレンは、夕日が眩しい倉庫の外へと出て行った。
これで良い。かの有名なバンド、“キャットオールスターズ”も言っていた。『メンバーの入れ替えはバンドのレベルを上げる為で、悪い事じゃない』と。
それでインニャーズデビュー出来るなら、俺は構わない。
「くりん、本当にこれで良いのですぞ? ギターのレンが居なくなったら、バンドとして成り立たないですぞ」
相変わらずかつお節を口に運んではいるが、ひげ丸も悲しげな表情を見せていた。
シャロンは、ベースを置いて両足で目を覆っている。
「ああ、これで良いんだ。ギターは、他の奴を探す。もっと熱いソウルを持っている奴をな」
俯く二人とは逆に、俺は上を見た。鉄筋が剥き出しの天井が、冷めた目で俺を見つめる。
俺が言いたかった事に、レンは気付いてくれたんだろうか。
照明の様に倉庫内を彩っていたオレンジ色は、深い漆黒に染まろうとしていた。
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