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零南という女は愛想が良く優しく接してくれた。知らない人なのになぜこんなに優しいのか不審に思うのだが、私の心から疑心が自然と消失する。
ふと零南が立ち上がり、リモコンらしきものを取るとグロテスクな映像を映したモニターに向ける。
「怖い物を見せたわね。代わりにこれでも見ましょ?」
チャンネルが変わり、画面にはドラマが映る。それは私も何度か見たことがあるドラマだった。
机にトランクを乗せ、男が対峙している。多分このドラマは某マンガが原作のもので、最初に見たのは中学生の頃、いや高校に入ってからだろうか。
記憶が曖昧である。
「やっぱり異世界のドラマはクオリティが高いわねぇ……。特に俳優陣が……」
「何をしてる、零南」
中性的な声が割り込み、再びチャンネルが変わる。グロテスクな映像が再び映し出された。
「ちょっと何してんのよ!今すぐ戻しなさい!」
「イヤだっ……と、あんたが雪梅か?」
私はコクリと頷く。すると白く綺麗に並んだ歯を輝かせ、彼女は私に手を伸ばした。
「俺は柚乃(じくの)。よろしくな!」
私は柚乃という女の顔を見つめた。金に近いような琥珀の瞳はまるで硝子細工を思わせる。光沢のある深い緑色の瞳は、しっかりと手入れが行き届いているし、邪魔そうに一つに結っているところが少々荒っぽい彼女にとても似合っている。着ている服は軍服をモチーフにしているのか凛々しさを兼ね備えた彼女によく似合っていた。何か格闘技をやっていたのか手や肩は少々しなやかさに欠けるがそが彼女らしい。
「あ、雪梅。柚乃は一応男なんだから気安く触ったら汚れるわよ」
「えぇ!?」
どう見ても女の子だろう。冗談なのだろうか。いや、俺という一人称から判断しても男だろうが、男勝りな性格の女だと言っても通じる。少なくとも彼女、いや彼は嘘をついたりしないだろうし、性別など偽ったところで損得が生じるわけではない。
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