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私はとにかく不思議で仕方なかった。こんなに優しいのもそうだが、異世界という単語や虐殺を大量に放送するテレビもおかしい。それにこの人たちも、私より深く私という人物を知っているのではないだろうか。
ふと、椅子から立ち上がって柚乃という男からリモコンらしきものを奪おうとしていた零南が、部屋の中央に置かれた荷物に気付いたのか、雪梅の方を向く。
「……雪梅……今日から此処に住むのにその程度の荷物で構わないの?」
「え?」
住む、と零南は言った。一体何を言っているのだろうか。
「だって貴女は今日からチームKillEyeのメンバーに」
「零南……」
低い声、悪魔を思わせる殺気が漂う低音が割り込み、私を含めた全員が目を向けた。すらりと伸びた身長。美しい紫色の瞳を素直に美しいと言えなくさせるような目付きの悪い瞳に赤みがかった茶色い髪。自らを死神と名乗る男雨龍が扉に寄り掛かっていた。
「あら雨龍、雪梅に話していなかったのかしら?」
零南は雨龍を咎めるかのような目で睨んでいる。先ほどまでの温厚な彼女の姿はない。先ほどまでは普通だった指先から刃物のように鋭い爪を伸ばし、殺意が灯る目で彼を睨み彼の喉元に長い爪を突き付けていた。少しでも動けば刺さるだろう。
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