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雨龍は爪をスッと撫でた。相変わらずポーカーフェースな彼の感情などは分からないがとりあえず零南の顔が青ざめていくところを見ると、どうやら零南はこうされることが苦手らしい。
「やっ……!」
遂に耐えきれなくなった零南が小さな悲鳴をあげて爪を縮めた。雨龍は柚乃と零南の二人を見下すかのような姿勢で立つ。
「二人とも邪魔だ。出て行け」
「ったく……」
柚乃は零南の手を引いて扉を勢いよく閉める。死神と名乗る男とたった一人残された私。体が震えて思考もままならない。
コワイ
ただそれだけが脳裏に過ぎる言葉だった。
「あの馬鹿どもに何かされたか?」
先に口を開いたのは彼。
私は首を横に振った。馬鹿どもだと彼は言うがあの二人は本当に優しく、私に危害を加えることなど一切しない人だった。そのせいか嫌な予感がする。
「そうか。ところで……零南に話されたから分かるかもしれないが、今日からここに住んでもらう」
予感は的中した。この人は、いや先ほど優しかった二人も含め彼等は全員マフィアで私にしたことは拉致行為。自分が住む国の近隣国のやっている行為と同じなのだ。私は監禁された後、どうなるのだろうか。だが、この目がある限り逃げ切れるかもしれない。
私は俯いて顔が見られないようにする。
「おい……どうした?」
「……拉致行為、ですね。ここに私を監禁して国にテロを宣告。貴方たちの好きにはさせませんよ」
私はいつの間にか目にされていた眼帯を外した。見つめた先は肋骨の下辺り。壁際に追いやる。気付いた時には紅い鮮血が部屋中に飛び散っていた。彼はしばらく立ち上がることは出来ないだろう。
私はスーツケースを引きずり窓から出る。ベランダの先にも何かがある。警戒心を張りつめ私はベランダに足をかけ屋根へ登ろうとした。
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