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私は血の気が引いた。この人はヴァイオリンのプロ奏者じゃない。殺人のプロなのだ。またの名を暗殺者とも言えるだろうか。
私は逃げようか迷うが、自分に敵からは見えない凶器があることを思いだし勝ち目がないわけではないことに気付く。
とりあえず今は時間を稼ごう。そうすればきっと誰かが来てくれる。
「ひ、人に名前を聞く時は自分から名乗るのが常識です。名乗って下さい」
すると彼はペンダントに手を翳し、身の丈よりも大きな鎌を取り出した。芝に誰かの鮮血が滴り落ち、私は息を飲む。
「俺の名前は雨龍(あまたつ)。闇を司る死神だ」
彼は突然、鎌を振り上げ私の目の前に突きつける。一歩でも動いたら刺さりそうなほどの至近距離にそれはあった。
「ひっ……!」
「早く名乗れ」
私は怖くなった。もう引き返せない。私は震える唇から名前を発する。
「……め」
「なんだ?」
「私の名前は……雪梅(ゆきめ)」
すると彼は魔法でも使ったのか鎌をペンダントに戻す。やはり殺されるのだろうか。
現実から逃げることを望んだ私に与えられた天罰がこれか、と思考し目を閉じた。
死にたくない。
死にたくない死にたくない。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
脳裏のよぎる文字さえもぼやけてきた。
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