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私が覚醒した時には何処かの部屋だろうか、とりあえずクーラーで適温に保たれている環境だということは分かる。発生源の不明な賑やかな声、高笑いや、爆笑は実に楽しそうに聞こえた。
だが違った。
「お願い、殺さないでぇ!!」
「嫌ぁあぁぁあぁー!」
飛び交うのは悲痛な叫び。
ここは何処だろうか。私が辺りを見回し目に入ったのは一台のモニター。その映像を見ようと私は画面に近付く。9つに分けられた画面にはあまりにも残酷な世界が映し出されていた。
路上に放り出された腕。腹を引き裂かれた屍。そこから掻き出された腸。切断された首。何もかもが生々しかった。
「ひっ……!!」
「無理も無いわね。あなたがいた世界は平穏だもの」
私の背後から落ち着いたトーンの女の声が耳に届く。その声に顔を上げると美しい女がいた。なびくブロンドに濁りのない美しい青い瞳。すらりと伸びた白く長い手足、微笑みを浮かべて佇む姿はまるで女優のようだった。
「私は零南(れいな)」
「ゆ、雪梅です……」
「そんなに畏まらなくていいわ。多分同じぐらいの年だから」
彼女はレモンティーを乗せたトレーをテーブルに乗せ、側にあった椅子に腰掛ける。細長い美脚を組む姿は溜め息がこぼれるほど美しい。
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