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「淡夜のところには、使いの人言わなかったんだね。」
花音は、少しむくれて淡夜の頭を撫でる。
「俺なんか来なかったし。」
淡夜は、首を傾げた。
「おかしーね、使いの人来ないの。」
燗は、淡夜と目線が同じくなるように屈んだ。
「だろ?使いの奴は俺たちの決められた2、3人に伝えればいいんだぞ。」
刹那。
ふわり、と金木犀特有の、甘い香りが漂う。
「もしくは、呼ばれちゃいけなかった、とか?」
その女は燗にクスリ、と妖美に微笑み、高いヒールの靴で優雅に歩き寄る。
白い肌に奥二重の切れ長の目、通った鼻筋。こじんまりとした口元。
俗に言われる東洋的美人だ。
アンニュイな大人びた化粧を施された顔に、綺麗に結い上げられたブラウンの艶めいた髪。
肩紐のない黒地の膝下程度のワンピースであらわとなった胸元は枝を形どり、先端に小さなパールがチョコンとついた華奢なネックレス、胸から腰にかけてのラインは、ウエストの細さを強調し、襞はクラシックな雰囲気をかもちだし、裾には白銀の細かい刺繍がされている。
それにふわっと腕に大振りな花弁の輪郭だけほんのりピンクな白い花のコサージュのついたショールを巻いていた。
「琉衣(るい)。」
ギクリ、とした燗は目を泳がせる。
気品と上品な色気を併せ持つ、少女は妖艶に笑う。
「だって2人もそう思わない?」
「ああ、そうか!!!」
花音は、嬉しそうに小さく拍手した。
「ただ燗を忘れただけなんじゃないのー?」
淡夜は、きょとんとして言う。
「ソレはないの、淡夜ちゃん。」
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