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淡夜は、唄い終えた後、急に駆け出した。
ショールをはためかせ、白い華奢な手足が軽やかな歩調を生み出す。
それは絢爛な舞のようでとても疾走しているようには見えず、目を奪われるような、そんな光景だった。
シャラン、シャラン、シャラン、・・・・キーン、シャラン、シャラン、キーン、・・・・。
淡夜の装飾品が音を立てる。いつの間にか、異なる金属音が混じってきた。
淡夜の後ろを駆ける、男の銀の細長いピアスが音の正体である。
その男は、突然淡夜の肩からニュッと顔を出した。
「よお、淡夜」
「わぁ、燗(かん)だぁ。今晩はー。」
淡夜は、柔らかく微笑みかけ足を止めた。
燗は、奥二重で長い瞼を少し伏せ、艶めかしく微笑み返す。
男にしては長めの黒髪に、形の良い眉、通った鼻筋、、割りと厚い唇、細い輪郭。そして、紅玉のような鮮やかな瞳。
Tシャツに、色褪せたジーンズと言う出で立ちが良く似合っている。
燗も、描妖の一人だ。
「つーかその喋り方どーにかなんないの?」
淡夜は、少し考えて言う。
「んー、そこまであたしの喋り方変ー?」
燗は、ため息をつく。
「間延び具合がネジ回し足りないみたいで。」
淡夜は少し難しい顔になる。
「そうかー、よく言われるけど、直せっては言われないよー。」
「まあ、淡夜らしいとこなんだからいいよ。直せないでしょ。」
燗は淡夜の頭を撫でた。淡夜は、気持ち良さそうに目を閉じる。
「んー、多分直せない。」
「そろそろ晩餐会始まるしさっさと行こ。」
「あー、そーだった。」
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