0人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「あの…教室に戻る時はちゃんと一人で戻れるから!こんな面倒な事頼まれてごめんね。」
小泉さんはまた笑って
「絵里でいいよ。」
「えっ?」
今度は私がきょとんとする場面だった。
「名字じゃなくて名前で呼んで?私も真紀って呼ぶから。」
「わかった。」
じゃあ後でねと音楽室での私の席を教えられて座りながら、
(絵里、か…。)
あれほど嫌だった転校も悪い事じゃないなって気がしてきていた。
休み時間になる度、小泉さんが気を使って私の席へ来てくれる事だけしか気にとめてなかったのだけど…。
私にはもちろん、小泉さんにさえ誰も話しかけてこないという事が不思議だった。
これは女子に限った事で男子は言葉を交わしたりはしている様だったけど…。
それでもおかげで無事転校初日を終えられて私は有頂天だったから。
そんな違和感はすぐに気にもとめなくなっていた…。
この時、《何かに》気づいたとしても…無力な私には何もできなかったんだろうけど。
最初のコメントを投稿しよう!