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「ただいまぁ…」
部活が終わり、家に帰る。
「あら、おかえり!…どうしたの?元気ないわよ」
お母さん。いつも明るいおしゃべり屋さんだからたまにうっとうしい事があるが、良いお母さんだ。
「…学校でちょっと嫌な事があって…」
私は、いじめられてるという現実を誰にも話せなかった。
「あらそう…」
お母さんは軽く返事をすると、リビングに向かって行った。
千夏はゆっくりと2階への階段をのぼる。
今日の事を考えると、足取りが重くなる。
「はぁ…」
ため息しながら階段をのぼると、お姉ちゃんがいた。
「あっ、千夏。おかえり」
お姉ちゃん。晴菜お姉ちゃん。高校3年生で、いつも優しく接してくれた。自慢出来るお姉ちゃんだ。
「お姉ちゃん!ただいま!」
お姉ちゃんにはいじめの事実は知られたくなかったから、わざと明るく振る舞った。
お姉ちゃんはそれに気付いたのか、私を見つめる。
「…あまり無理しちゃ駄目だよ。1人で悩まないで。いつでも相談に乗るから、元気だして?千夏…」
「うん…。ありがと…」
そして、心配するお姉ちゃんを横目に自分の部屋に入る。
パタン… ガチャ…
ドアを閉め、鍵を閉める。
鞄を放り投げ、ベットに飛び込み横になる。
枕元には、写真立ての中に私と唯と萌と加恋の写真が飾られている。
私は、その写真を取り出す。
「…明日には元に戻るよね…」
気付くと、私の目からは涙が流れていた。
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