捨て猫

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まあいい。それより猫だ。 見れば、猫はこちらを見ながら「なー、なー」と僕を呼んでいる(ような気がする)。なあなあ、こっち来いよ、と。 ゆっくりと、僕はそちらへ。しゃがんで手を翳す。 「にゃあぉぅ……」 全然ビビってないわ、この子ったら。人の恐ろしさを知らぬ、純真無垢と言える猫だな。 とりあえず、頭を優しく撫でた。両目を閉じて、されるがままの猫は可愛いぜ。 よし、拾っちゃおう。 親は海外旅行で居ないし、大丈夫だろ。居ても大丈夫だろうけど。二人とも動物大好きだし。僕も明日から高校、夏休みだし、しばらく面倒は見れる。 迷いなく段ボールを持って、猫を撫でながら我が家へと帰宅した。 まずはミルクだ、と僕は冷蔵庫をチェック。ミルクっつーか、牛乳があった。それを器に移して猫に飲ませる僕。 ぴちゃぴちゃ言わせて飲む猫は、さっきよりも少し元気がある。真っ白な毛並みも、心なしか艶が出てきたような。 「名前決めなくちゃなあ」 どんなのがいいだろう。手堅くタマか?駄目だ。みかんを割って出てきそうな名前で、少し嫌だ。それにありがち。 ジョセフィーヌ?もっと駄目だろ。もしも猫をそんな名前にしてる奴がいたら、思いっきり泣かせてやる。そして涙をそっと拭いてやる。 決まらん。まあ、自己紹介だけでもするか。 「僕は上条龍斗。高校2年生で、今は彼女はいません」 何故猫に今現在彼女がいない事まで言わねばならんのか。分からんが言ってしまったもんはそれまでよと。つうか、なんで敬語?
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