序章

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17歳の夏。 夢を見た。 真っ暗な空間に浮いていて、足元は泥沼。 突然、目の前が赤く輝き出したと思えば光が消えて小さな赤鬼が現れた。 手のひらサイズにも関わらず、ギラギラ鋭く光る濁った金色の瞳。いかつく険しい顔付き。鋭い牙と太い角が二本生えている。 服は下半身に茶色のボロボロな布切れを纏ってる。 まさに、鬼そのもの。 鬼は、あたしに言った。 「恋歌、お前はもう時期死ぬ。」 嗚呼、そうか。 もう死ぬ時間なんだ。 覚悟していた。 だから恐怖なんて無い。 だけど、両親には最大の親不孝をしちゃうんだ。 両親より先に死ぬなんて、あたしは最も重い親不孝をするんだ。 それに友達。 今までずっと黙って居たけど、急にあたしが死んだら困るよね。昨日まで普通に話していたのに…。 走馬灯が廻る廻る流れていると、赤鬼は鋭い牙を覗かせて不気味に笑った。 「だから死ぬ前に楽しいゲームを与えてやろう。楽しいゲームをな」 …ゲーム? 「そうだ。とびっきり愉快で、過酷なゲームさ」 赤鬼が言い終わった後、黒く濁った野球ボール程の球体があたしの周りをクルクル回った。 立て続けの言葉と現象に怯えてた。 「なに、怖がる事は無い。それはお前の命を左右する光なんだからなぁ」 鬼は相変わらずの笑顔を浮かべて淡々と告げた。 え…?あたしの命を…? 一体どういう事? 「時期に分かる」 全てお見通しの如く鬼の口端は更につり上がる。 すると、球体が私の前で止まった。渦巻いて濁るそれは薄気味悪く、とてつもなく恐ろしい。 体中の毛が逆立って逃げ出したい衝動に駆られたまさにその時、球体は私へと目掛けて飛んできた。 息を飲み込む暇もなく、それは胸に飛び込み…そして私の中に入ってしまった。 「おめでとう、黒龍はお前を気に入ったそうだ。」
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