3人が本棚に入れています
本棚に追加
17歳の夏。
夢を見た。
真っ暗な空間に浮いていて、足元は泥沼。
突然、目の前が赤く輝き出したと思えば光が消えて小さな赤鬼が現れた。
手のひらサイズにも関わらず、ギラギラ鋭く光る濁った金色の瞳。いかつく険しい顔付き。鋭い牙と太い角が二本生えている。
服は下半身に茶色のボロボロな布切れを纏ってる。
まさに、鬼そのもの。
鬼は、あたしに言った。
「恋歌、お前はもう時期死ぬ。」
嗚呼、そうか。
もう死ぬ時間なんだ。
覚悟していた。
だから恐怖なんて無い。
だけど、両親には最大の親不孝をしちゃうんだ。
両親より先に死ぬなんて、あたしは最も重い親不孝をするんだ。
それに友達。
今までずっと黙って居たけど、急にあたしが死んだら困るよね。昨日まで普通に話していたのに…。
走馬灯が廻る廻る流れていると、赤鬼は鋭い牙を覗かせて不気味に笑った。
「だから死ぬ前に楽しいゲームを与えてやろう。楽しいゲームをな」
…ゲーム?
「そうだ。とびっきり愉快で、過酷なゲームさ」
赤鬼が言い終わった後、黒く濁った野球ボール程の球体があたしの周りをクルクル回った。
立て続けの言葉と現象に怯えてた。
「なに、怖がる事は無い。それはお前の命を左右する光なんだからなぁ」
鬼は相変わらずの笑顔を浮かべて淡々と告げた。
え…?あたしの命を…?
一体どういう事?
「時期に分かる」
全てお見通しの如く鬼の口端は更につり上がる。
すると、球体が私の前で止まった。渦巻いて濁るそれは薄気味悪く、とてつもなく恐ろしい。
体中の毛が逆立って逃げ出したい衝動に駆られたまさにその時、球体は私へと目掛けて飛んできた。
息を飲み込む暇もなく、それは胸に飛び込み…そして私の中に入ってしまった。
「おめでとう、黒龍はお前を気に入ったそうだ。」
最初のコメントを投稿しよう!