第一章 そして運命のとき

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 えっと、この後になにを言ったかは自分でもよく覚えてないんだけど、なんだかみんなの顔がひきつってたような気がします……。                今日はホームルームだけの午前中授業で、お昼前には完全下校。なのでお昼からは明日香ちゃんと美帆ちゃんと、一緒に遊ぶ約束をしいてるのだ。  3人で廊下を歩いていると、ふいに何かを忘れているような不快感に襲われた。この魚の骨がのどに引っかかったみたいな気持ち悪さは、えーっと、えーっと、ああそうだ。筆箱を教室に忘れたんだ。  さっきまは覚えてたのになぁ。仕方ないな。 「あ、わたしちょっと教室に忘れ物しちゃった」 「忘れ物?」 「うん、筆箱をね。先に行ってて、後で追いつくから!」  そう言いながら歩いてきた道を逆走して、数十秒もすると教室の前に着いた。  どうせ教室には誰もいないんだろうな。  カラカラとドアを開け、中に入る。と、そこに女の子がいた。窓際の後ろの方の席から静かに外を眺めていた。 「なにか、よう?」  ふいにその子の瞳がわたしをとらえた。心臓が少しドキッとした。 「あ、えと、忘れ物を取りに来て……」 「そう」  その子は最低限のことを言ってまた外を向き始めた。
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