第一章 そして運命のとき

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「わたし、朝霧優奈っていうんだ」 「知ってる。自己紹介で変なこと言ってた」  わたし、何て言ったのかな。きっと今のわたしの顔、苦笑いってやつなんだろうなぁ……。 「そう、なんだ」  それからその子は口を開かなかった。わたしは机の中に取り残されてあった筆箱をカバンの中にしまい、教室をでようとした。 「あの……」  掛ける必要もなかったのに声を掛けたのは、なんとなくその子が気になったからで、 「なに?」 「えっと名前……。きみの、名前は?」  なんとなく、お友達になれそうな気がしたんだ。やがてその子はためらうように答える。 「美咲(ミサキ)、璃音(リオン)……」 「じゃあ璃音ちゃんだね。わたしのことは優奈でいいよ、みんなそう呼ぶから」  璃音ちゃんは一度、わたしの名前を発してくれた。 「うん?」 「私は、誰も信じないから」  席を立つ璃音ちゃんがやけにゆっくりに見えた。そしてしばらく彼女の言っている意味が分からなかった。 「………」  ゆっくりと璃音ちゃんがドアへと向かう。  彼女が出て行ってからも、わたしはそこに立っていることしか出来なくて、仕方なく明日香ちゃん達のところに戻ることにした。
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