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「わたし、朝霧優奈っていうんだ」
「知ってる。自己紹介で変なこと言ってた」
わたし、何て言ったのかな。きっと今のわたしの顔、苦笑いってやつなんだろうなぁ……。
「そう、なんだ」
それからその子は口を開かなかった。わたしは机の中に取り残されてあった筆箱をカバンの中にしまい、教室をでようとした。
「あの……」
掛ける必要もなかったのに声を掛けたのは、なんとなくその子が気になったからで、
「なに?」
「えっと名前……。きみの、名前は?」
なんとなく、お友達になれそうな気がしたんだ。やがてその子はためらうように答える。
「美咲(ミサキ)、璃音(リオン)……」
「じゃあ璃音ちゃんだね。わたしのことは優奈でいいよ、みんなそう呼ぶから」
璃音ちゃんは一度、わたしの名前を発してくれた。
「うん?」
「私は、誰も信じないから」
席を立つ璃音ちゃんがやけにゆっくりに見えた。そしてしばらく彼女の言っている意味が分からなかった。
「………」
ゆっくりと璃音ちゃんがドアへと向かう。
彼女が出て行ってからも、わたしはそこに立っていることしか出来なくて、仕方なく明日香ちゃん達のところに戻ることにした。
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