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夜の暗さを切り裂く無数のサーチライトが高いビルの上にいる獲物を光の中に浮かび上がらせる。
大勢の者達が光に照らされた獲物を追って全力疾走。
サイレンと怒号が静寂な夜を打ち壊す。
この異常な夜の主役は必死に追っている者達ではなく、追われているにも関わらず余裕の笑みを浮かべている者だ。
追われている者はしなやかな動きと優雅な仕草で隣の高いビルに飛び移り、ワザと追われているかのように見えた。
しかし、今飛び移ったビルの隣のビルはあまりにも低く、隣のビルの高さと差がありすぎだ。
「待て~! ホワイト~!」
下にいる者達が口々にそう叫ぶ。すでに隣のビルの屋上には彼らの仲間が大勢いるのだ。やつは袋の鼠。いや、檻の中の猫。
そして彼ら、彼女らはこの国の治安を守る警察だ。
四方のビルと地上にいる警察官が獲物がいるビルを取り囲む。
「嫌ねぇ♪ 怖いお巡りさん達だこと♪」
白のマスクと白のボディスーツに身を包み、余裕しゃくしゃくで警察にそう言う。
ホワイトは無駄な脂肪も筋肉もないスラッとした体型と上等な毛並みをライトを使って見せつけるようにポーズを決める。
警察と言えども男は男。うっかりホワイトに魅入ってしまう。
その隙を百戦錬磨のホワイトが見逃すはずがなかった。
「じゃぁね♪」
ウインクと投げキッスを忘れずに魅入る男達に贈り、ホワイトはスーツの上に着込んだ上着の下、背に仕込んだ特殊気球を一気に膨らませ、上空へと逃げた。
「待て~!」
気がついた時にはもう遅い。特殊な気球はホワイトを遥か上空へ運び去ってしまった。
ライトからも逃れたホワイトを確認する術は肉眼しかない。しかし、例え夜目が利く猫の目でも不可能だった。
「あぁん、もう! 悔しい~」
警察官の一人、いや、一匹の翡翠は頭にちょこんと乗った帽子を地面に叩きつけ、悔しさをあらわにする。
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