15人が本棚に入れています
本棚に追加
「幸宏、ネコの声がどこから聞こえるかわかる?」
幸宏は目を開いて工事中のほうを指差した。
「あの工事中の方向から聞こえてくるみたいだな」
「わかった。みんな、行くよ」
僕たちは工事中のほうに向かって歩き出した。
「ホントかしらねぇ?」
なぎさは疑い眼(まなこ)で幸宏を見ている。
「……いな」
「え……」
幸宏は小声で何かをつぶやいた。
「どうしたの?」
「やばいかもしれない」
「それって……」
幸宏は僕に真剣な顔を向けてうなずく。
それ以上、みんなは工事中の場所に向かうまで喋らなかった。
横断歩道を渡って工事現場に近付いていると工事の音に紛れてさっきよりも猫の鳴き声がはっきり聞こえてきた。
「ウソ……ほんとに聞こえてきたわ」
「すごいですぅ」
幸宏の聴覚の良さを疑っていたなぎさは呆然と驚き、優奈ちゃんは驚きと尊敬のこもった歓声を上げる。
む、なぎさはともかく優奈ちゃんに尊敬されるなんて羨ましいヤツだ。
それより、
「ここにいるの?」
黒とオレンジ色のフェンス越しに作業の妨げにならないよう青いシートを被せて作業中の工事現場を見上げながら意識を耳に集中している幸宏に話し掛けた。
すると
「ちょっと待ってくれ」
という返答が返ってきた。
ぼくは「わかった」と答えてフェンスのどこかにある入り口を探すことにした。
「なぎさ、優奈ちゃん、幸宏がネコのいる場所を特定するまでここに入るための入り口を一緒に探してよ」
「うん、わかったわ」
「はいですっ」
最初のコメントを投稿しよう!