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僕たち三人は分かれて入り口を探そうと足を踏み出しかけた。そのとき、
「待ってくれ」
と集中していた幸宏に呼び止められた。
足を止めて顔だけを幸宏に向ける。なぎさと優奈ちゃんも足を止めて幸宏に視線を注ぐ。
「どうしたの?」
「ここじゃない」
「ここじゃないってネコがいる場所?」
「そうだ。あそこから聞こえてくる」
そう言って幸宏はここから少し離れた場所を指差す。
指差した方向をみんなで見るとそこには金属製の大きな箱……あれはゴミ捨て場になっているダストボックスっていうやつかな? があった。
「あそこから聞こえるの?」
うなずく。
みんなでダストボックスに近付く。近づくにつれネコの鳴き声が大きくなってくる。心なしか鳴き声が弱くなっている気がする。
ダストボックスの前に来てふたを開けようと腕を伸ばした。
「待て」
幸宏の声にピタッと伸ばした腕を止める。
「なにさ」
ダストボックスを見ながら幸宏に返事をする。
「いいのか? そこを開けると後戻りできないぞ」
「ちょっと! いきなり何を言い出すのよっ」
「おまえは黙っていろ」
「お、おまえって……な、なによぅ」
幸宏は怒りだそうとするなぎさを睨みつけて黙らせる。
幸宏はもう一度僕に問う「本当に開けてもいいのか?」と……。
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