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幸宏がなにを言いたいのかなんとなく僕には分かる。
このまま、ふたを開いてネコを飼う覚悟があるのかと言いたいのだろう。
この鳴いているネコには悪いけど僕には生憎(あいにく)そんな覚悟もなければ死んでしまったときの責任もとれない。だけど……僕は振り向いて幸宏の顔を見つめる。
「だって可哀想じゃないか。こんな、こんなに助けを呼んでるような声で鳴かれたら助けたくもなるよ」
幸宏は片眉を吊り上げる。
「お前は同情でそのネコを飼うつもりなのか? そうなら止めておけ。その程度の覚悟で生き物を飼ったらろくなことにならないぞ。俺のようにな……」
「幸宏が言いたいことはなんとなくわかるよ。同情して飼ったらこのネコにとって不幸になるから飼うなって言いたいんだよね」
「それを分かっていながら、なぜ……?」
「う~~ん。なんとなく……かな?」
「ふざけてるのか?」
「そんな怖い顔しないでよ。僕は頭が悪いから幸宏みたいに考えられないよ。ただ、助けを呼ばれたら助ける。それが僕だよ」
エヘンと胸を張ってみた。
「……………………」
幸宏は珍しいものを見る目で僕を見つめる。
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